――できない自分を責め続けた僕が、視界を取り戻すまで
はじめに|「ワクワク」と「不安」は、同時に始まった
ITエンジニアとして未経験で現場に入ったとき、
正直に言えば、ワクワクのほうが大きかった。
新しい業界。
新しいスキル。
「努力すれば、また一段階上に行けるかもしれない」という期待。
でも、そのワクワクは現場に入ってすぐ、形を変える。
案件の説明を受けても、内容が理解できない。
言葉は日本語なのに、意味が取れない。
質問をしようにも、何が分からないのかが分からない。
気づけば、ワクワクの下から、
じわじわと不安が湧き上がってきていた。
第1章|用語が分からない以前に「判断できない」ことが怖かった
最初にぶつかった壁は、技術そのものではなかった。
一番しんどかったのは、
**「自分で判断できない状態」**だった。
会議では、次々と用語が飛び交う。
でもそれが、
- IT用語なのか
- 業務知識の用語なのか
- この案件だけで使われている言葉なのか
判断できない。
さらに現場では、
サーバーを目の前にして、こう思っていた。
「これ…コマンド打っていいのか?」
「そもそも、何をやろうとしてるんだ?」
Linux環境を触るのも初めて。
コマンド一つで、
何かを壊してしまうんじゃないかという恐怖。
自分が打とうとしているコマンドの意味を、
本当には理解できていない不安。
「分からない」より先に、
「触っていいのか分からない」。
この状態は、想像以上に神経をすり減らした。
第2章|毎日の終わりに浮かんでいた、同じ問い
一日が終わって、帰り道。
頭の中で、いつも同じ問いが繰り返されていた。
明日、ついていけるんだろうか。
どうすれば、分かるようになるんだろうか。
今日も大きな成果は出せていない。
戦力になっている実感もない。
ただ「そこにいた」だけの一日。
そのくせ、
明日はまた何事もなかったかのように始まる。
未経験エンジニアの一番つらいところは、
努力している実感と、成長している実感が一致しないことだと、
今なら思う。
第3章|「戦力になっていない」という焦り
当時、一番強かった感情は何か。
それは、はっきりしている。
焦りだった。
自分は戦力になっていない。
チームの足を引っ張っているかもしれない。
周りは普通に仕事をしているのに、
自分だけが立ち止まっている感覚。
そして、こう思い始める。
向いてないのかもしれない。
この言葉が、何度も頭をよぎった。
第4章|「センスのある人」に見えた存在
当時、周りにいたエンジニアたちは、
正直言って、別次元の存在に見えていた。
- 理解が早い
- 考えるスピードが違う
- そもそも頭がいい
そんなふうに感じていた。
同じ説明を聞いているはずなのに、
質問の質が違う。
自分は「何を聞けばいいか」すら分からないのに、
彼らは「本質」を突いた質問をしている。
この差は、
努力で埋まるものじゃないんじゃないか。
当時は、本気でそう思っていた。
第5章|それでも「逃げたくなかった」理由
正直に言えば、
「向いてないのかも」という気持ちは何度もあった。
でも一方で、
ここで逃げるのは嫌だという感情も、確かにあった。
JR時代は、
「働けない状態」になってしまっていた。
でも、ITは違った。
苦しいけど、
「自分の力をつければ、働きやすくなる世界」だと感じていた。
能力の問題であって、
人格や根性の否定ではない。
そう思えたことが、
ギリギリ踏ん張れる理由だった。
第6章|誰も教えてくれなかった「成長は直線じゃない」という事実
今振り返ると、
一番の勘違いはここだった。
「すぐにできるようになると思っていた」
知識を覚えれば、
少しずつ右肩上がりで成長すると、
どこかで思っていた。
でも現実は違った。
知識は「点」として増えていく。
けれど、現場で必要なのは「線」や「面」。
点と点がつながらない限り、
仕事では通用しない。
そして、この「つながらない期間」が、
想像以上に長い。
誰も、ここを教えてくれなかった。
第7章|「圧倒されていただけだった」と気づいた瞬間
印象が変わったのは、
時間が経ってからだった。
1年ほど経った頃、ふと気づく。
あれだけ別次元だと思っていた人たちが、
実は普通の人だったことに。
いや、普通という言い方は違う。
特別な天才ではなかった、ということだ。
当時は、
単に自分が何も見えていなかっただけ。
視界が狭く、
情報量が少なすぎて、
圧倒されていただけだった。
第8章|成長を実感できた「小さな瞬間」
明確な「ブレイクスルー」はなかった。
ただ、いくつかの小さな瞬間があった。
- 会議の内容が、自然と頭に入ってくる
- ソースコードを読むスピードが上がる
- 説明を聞いて、「質問が浮かぶ」ようになる
これらは派手じゃない。
でも確実に、
世界の見え方が変わり始めていた。
第9章|成長曲線は、沈黙のあとに跳ねる
未経験エンジニアの成長曲線は、
きれいな右肩上がりじゃない。
むしろ、
- 長く横ばい
- 何も変わっていないように感じる期間
- 自信が削られる時間
そのあとに、
ふっと視界が開ける。
この「沈黙の期間」を知らないと、
ほとんどの人は、途中で自分を否定してしまう。
終章|過去の自分へ、そして今苦しんでいるあなたへ
もし、未経験エンジニア時代の自分に
一言声をかけられるなら、こう言う。
1年あれば、成長したと感じる瞬間が一度はある。
勉強はずっと続くけど、その分ちゃんと成長できる。
成長できるまでが苦しいだけだ。
まずは、1年だけ踏ん張ってほしい。
今、苦しんでいるあなたも、同じだ。
できない時間は、無駄じゃない。
見えていないだけで、
確実に土台は積み上がっている。
成長曲線は、静かだ。
でも、ある日確実に跳ねる。
それまで、自分を責めすぎなくていい。
あなたは、間違った場所にいるわけじゃない。
ただ今は、誰も教えてくれなかった時期にいるだけだ。



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